根本満の科学通信

根本満オリジナルグラフィック使用
発行:平成14年5月

スギナとツクシの関係は?

 春休みの3月末、私は新2年生にある物を見せたいがため、G用水近くの土手に、ある物を採取しに行きました。道行く人が私に冷たい視線を浴びせます。「何だ、このオッサン」「いい年かっ食らって何してるんだ」「不審者じゃないか」「気でも狂ってるんじゃないのか」。そんな冷たい視線に耐え、私が小さな小さなプラスティックの入れ物に、ある不思議な緑の粉を集めていきました。
 その粉とは、土筆(つくし)の頭の部分から出る緑の粉です。私は、土筆を一本取っては頭の部分をケースの中に突っ込んでシャカシャカと振り、緑の粉を落とします。合計で20本くらいの土筆から、丸めれば直径5mm位の小さな固まりになる程度です。しかし、その小さな固まりの中に驚きの、ある物が数千、数万、ひょっとすると数百万個含まれているかも知れません。
 私は、自分が見て感動した物はいつか必ず生徒にも見せたいとずっと思っていました。その一つが今回の「太陽系9と4分の3惑星・謎の生物」と題して、顕微鏡で観察させた「スギナの胞子」なのです。最初からスギナの胞子と言って観察させても感動はするかも知れませんが、期待感はあまりありません。私は、最近大ヒットした映画「ハリーポッター」に出てきた9と4分の3番線をヒントに「太陽系9と4分の3惑星の謎の生物」を見せると生徒に言いました。生徒達はわくわくどきどき「一体どんな物が見えるのか、本当に動くのか、宇宙人なのか、生きているのか」等々、色々想像を巡らしながら興味津々でした。
 顕微鏡で最初に見たとき、何だこれ変な形してる。クモみたい。そして、その不思議な生物に息を吹きかけた瞬間、「キャー」と悲鳴を上げた生徒、思わず飛び上がってびっくりした生徒、「うわー、動いた」と言って興奮する生徒。理科室は興奮のるつぼと化しました。春休みのうちに苦労して取っておいた甲斐がありました。こんな面白い物、感動的な物が教科書には載ってません。(勿論、4月の新学期になってからではもうツクシはほとんど枯れてしまっているので胞子は採取できません。)しかし、私は見せました。一人でも多くの生徒が理科に、そして自然の神秘に興味を持ってくれることを願って。
【物知りノート】スギナ(杉菜)・・トクサ科の多年生のシダ。地下茎が長くはい、早春に節からツクシと呼ばれる胞子茎を、次いで栄養茎を出す。栄養茎は緑色で、通常これを「スギナ」と呼んでいる。正確には、ツクシと言う名の植物はありません。ツクシとは、スギナと言う植物の地下茎から、早春に地上に出る胞子を作るための特別な茎のことなのです。胞子で増える植物には、他に苔やカビやキノコなどがあります。胞子とは種子植物では種子に当たる物です。このようにスギナとツクシの関係を正しく理解している人は日本中で千人に一人もいないと思われます。「ツクシが大きくなるとスギナになる。」「スギナがツクシになる。」と思っている人が世の中に沢山います。「真実を知っている人は少数派」なのです。どうか、ご家庭の話題にしていただきたいと思います。自然の神秘、真実を知ってもらいたいと思います。



(注)この図は根本のオリジナル作品です。私の許可無く、複写・複製・転載をすると、著作権法に触れるおそれがありますのでご注意下さい。