春の七草のホトケノザは
一体どっちが本物

みんな食べてる、にせもののホトケノザ(仏の座)

シソ科のホトケノザ
高さ10〜30cm。畑地に多い二年草で花は紫。葉を仏様の座布団に見立ててこの名が付いた。道ばたや畑、田んぼのあぜ道などどこにでも生える。見つけることが容易でみんなこれが春の七草と思って食べている。真冬から夏までほとんど1年中見られる。1月でも花が咲いているものがある。食べられない草はほとんど無いので、食べても安心であるが、あまりおいしくないらしい。
キク科のホトケノザ
高さ10〜20cm。田に多い二年草で花は黄色。普通はコオニタビラコまたは、ただのタビラコという。これが春の七草で言う「ホトケノザ」である。ただし、これを見つけるのは容易ではない。ロゼット型をした葉が地面にへばりついている。1月には花は咲かないのでこの葉だけで識別することは慣れない人には無理である。かなり間違った草を取って食べていると思われる。


七草がゆは自然の恵み T・Iさん
「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロこれぞ七草」と覚えて、昔から親しまれている正月行事のひとつに七草がゆがあります。
私の母が作ってくれた七草がゆは、ナズナの甘い味と土の香りがして、何とも言えない大自然の恵みを感じさせました。私は10年ほど前から七草を覚え、そろえたいと思い、毎年12月になると七草の鉢植えを趣味として作っています。わが家の庭には鉢植えから落ちた種子が飛び散り、自然に七草が生えています。
七草をそろえるのに1番大変だったのがホトケノザでした。これは食べられず。食べられるのは「コオニタビラコ」です。植物図鑑にも書かれています。スズナ、スズシロは10月半ばに種子をまくと、正月には小さな可愛い葉が出てきます。環境保護や総合的な学習が叫ばれていますが、七草は絶好な教材ではないかと思っています。(J新聞ひろば欄より)


平成15年1月7日付J新聞「三山春秋」

 「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、春の七草」。七草がゆを食す習慣は平安時代に始まったという。あつものにして食べた時代もあった。地域によっては七草の種類が異なる
▼七草がゆの行事は各地にあるが、桐生市川内町の崇禅寺が有名だ。朝六時から大がまでかゆを炊いて作る。被写体としては格好の題材だ。多くのマスコミが取り上げ、市内だけではなく近郷近在からも見物人が訪れる
▼特に宗教行事とは思えないが、昔の僧侶はぜいたくを避けて、かゆと漬物の食事で荒行に励んだというし、七草にホトケノザもある。まんざら縁がないわけでもなさそうだ。ちなみに、この草はキク科のタビラコの別称で、同じ名で有毒成分のあるシソ科の植物があるから紛らわしい
▼七日にかゆを食べるのは、一日の大正月と十五日の小正月の中間だからという。風邪をひかないとか、一年息災で過ごせるとかいわれるが、おせち料理や酒で食傷した胃を癒やす古人の知恵だろう。かゆは消化吸収が良く、病気から回復する際の定番食だ
▼今回の年末年始休暇は、五日の日曜日まで連続九日間というロングバケーションの企業が多かった。仕事始めは月曜日となリ、気持ちを切リ換えやすかった。もっとも、長引ぐ不況で正月気分に浮かれていられないという人も少なくなかったろう
▼バブルがはじけてから、経済は上向きかけたと思ったら、すぐに腰くだけ。その繰り返しだ。いつになったら力強い回復を見せるのか、まったく分からない。早く息災となるよう、日本経済にも七草がゆを食べさせたい。

 この記事に対して私は新聞社に次のような内容で投稿しました。

             食べても安心、「シソ科」のホトケノザ
 七日付の三山春秋に、春の七草のホトケノザはキク科のタビラコの別称で、同じ名で有毒成分のある「シソ科」の植物があるから紛らわしいと書いてありました。
 これを見た読者の中には、もしや毒草を食べていたのではと心配した人もいたようです。案の定、生協のチラシの巻頭カラーで、紫色の「シソ科」のホトケノザが春の七草として載っていました。私の知る限り、この草に毒があるという記述のある図鑑は見た覚えがないのですがいかがなものでしょうか。
 シソ科のホトケノザの花は紫。葉を仏様の座布団に見立ててこの名が付きました。道ばたなどどこにでも生え、すぐ見つかるので多くの人はこれが春の七草と思って食べているようです。真冬から夏までほとんど一年中見られ、一月でも花が咲いているものがあります。食べられない草はほとんど無いので、食べても安心ですがあまりおいしくないようです。
 一方、キク科のホトケノザの花は黄色。普通はコオニタビラコと言います。これが春の七草のホトケノザです。ただし、これを見つけるのは容易ではなく、ロゼット型をした葉が地面にへばりついていて、一月には花は咲かないので、この葉だけで識別することは慣れた人でないと困難です。
 以前「七草がゆは自然の恵み」と題して高柳愛吉さんが七草をそろえるのに、一番大変だったのがホトケノザだと言っていた理由がこれでおわかりだと思います。
 
 追伸、私はS中で理科の教師をやっています。毎年春先には「春の草花調べ」を授業でしていますが、「シソ科」のホトケノザは何処でも生えていて、生徒にはこれを春の七草と間違えるなといつも言ってきました。過去にもこの草を春の七草と思って食べているという話をよく聞きました。私の持っている権威のある植物図鑑は勿論、日本で最も権威のある「牧野富太郎植物図鑑」を見ても一切「毒がある」という記述はありませんでした。それどころか、薬草になるということです。
 今、世間は食べ物に対する不信感で充満しています。三山春秋の「毒素のある」シソ科のホトケノザの記述はまさに読者を不安にさせたことでしょう。事実、私の隣の先生が生協の七草を買って食べたと言っていて、その生協のチラシにはこの「毒素のある」シソ科のホトケノザが写真で載っていたのです。三山春秋はJ新聞の顔です。人づてに聞いたのか分かりませんがよく調べてから書くべきだったと思います。特に「毒素がある」などという記述を気軽に使っていいはずがありません。紙面で訂正するようお願いします。
 これに対して次のような内容の記事が載りました。

平成15年2月14日付J新聞「三山春秋」

 一月七日付の小欄に七草がゆのことを書いた。「春の七草のホトケノザはタビラコのことで、有毒成分を含むホトケノザがあリ、紛らわしい」という内容だった
これに関し、中学校の先生からメールをいただいた。「権威ある牧野富太郎植物図鑑をみても、ホトケノザに『毒がある』という記述はない、誤りではないか」。指摘を受けて電話すると、「もし有毒だったら、私は二十年間、生徒にうそを教えてきたことになる」という。教職という仕事に誇りと責任を持っていることが、ひしひしと伝わってきた
▼大手出版社の山菜ガイドブックに「有毒成分を含む」という記述があったので紹介したが、指摘を受けて、関係機関に当たった。この中で、富山医科薬科大学の和漢薬研究所がこの"有毒成分"について親切に教えてくれた
▼それによると、ホトケノザには苦みを感ずるイリノイドという生理活性成分があり、何がしかの作用を及ぼす可能性があるものの、大量に摂敢しなければ害はないだろう、ということだった。ホトケノザを詳しく調べた例がほとんどなく、資料も乏しいというが、通常では問題となる成分は含まれていないようだ
▼冬から春にかけ、食べ物と関係した行事が多い。きようは「聖バレンタインデー」。チョコレートが全国で飛び交う。「愛の告白の代わリにチョコレートを贈リましょう」と、ある専門店が提案したイベントが定着したという説がある
▼もっとも、最近はもっぱらゲーム感覚。チョコは"義理"で、本命は別の物を贈る人もいる。ホトケノザと違って愛の告白は紛らわしくないのが一番だ。