校舎の4階から牛乳瓶やトイレットペーパーが降ってくる。トイレの便器が破壊されている。土曜の放課後は廊下を自転車が走り回る。先生が生徒に木刀や鉄パイプで追いかけ回される。階段は生徒の吐く唾や痰だらけ。音楽室のステレオやギターが盗まれる。職員室のラジカセや置いてあった物が、いつの間にか無くなっている。生徒が一生懸命に描いた絵を教室に張ったら、次の日の朝すべてバリバリにはがされている。タバコを吸っていた生徒を現行犯で見つけても「煙の出てる物が落ちていたので何だろうと拾っただけだ」としらばっくれる。新任の女の先生が殆ど一人で掃除をしていて、生徒は「俺達は給料を貰ってねー」と言って見ているだけ。年輩の先生が授業をしてると、黒板に給食で出たミカンが次から次へと飛んでくる。授業を抜け出し、風船をふくらませて遊んでいる茶髪の女子に、それは何だと聞くと「色つきのコンドームと答える。」等々・・・まだまだ挙げれば切りがありません。信じがたい光景が今でも脳裏に焼き付いている。この文章は、希望に胸を膨らまして、T中学校に赴任した教師1年目に、学校文集に特集として載せられたものです。はっきり書けない、具体的に書けない、本当のことを書けない苦しさを文章化しています。この文章の背景に信じがたい現実があったことを忘れないで欲しい。 |