季節の花 スミレの果実
あなたは見たことがありますか?
【名前の由来】「牧野新日本植物図鑑」のスミレの項には、“スミレはスミイレの略で、花の形が大工が用いる墨壷に似ているからである”とでている。
牧野富太郎博士著「植物記」の“スミレ講釈”という項には“スミレ名談義”という一章があり“スミレという名を聞けば、何ということなしにそれがいい名で慕わしく感ずるのであるから、これはそのスミレなる名の起こりに対し盲目であるのがむしろ賢いのではあるまいかと思われる。なんとならば、実はひとたびその語源を知れば、どうもこの美名が傷つけられるような気がしてならないからである。スミレは、かの大工の使う墨入れの形から得た名で、それはスミレの花の姿がその墨入れに似ているからだというのである。すなわちそのスミイレのイが自然に略されてそれがスミレとなったというわけだ”と記されている。
これに対して異論を唱える学者もいるが、墨入れ説が定説になっている。
さて、スミレといえば花は誰でも知っているが、その果実となるとほとんどの人が首をかしげてしまう。スミレに果実など無いと思っている人も多い。花がしおれた後のスミレに、関心を持つ人がいないということであろうか。可憐な紫色のスミレの花が、綺麗だと感心して終わりなのである。
それともう一つ、大きな理由がある。それは人の視線が高すぎてスミレの果実を発見しにくいという果実である。否、事実である。スミレの果実が下向きにできるので、上から見るとガクが邪魔をして見事に果実が隠れるのである。スミレの果実など見たこと無いという人は、視線を落とし、花が終わってしばらくたったものをつまんでみるとよい。見事なスミレの実を見つけ、今まで気がつかなかった自分に気がつくことだろう。