現代版祝詞(のりと)

榛名高原学校名物の火の神の祝詞(のりと)・普通、校長先生が衣装をまとい厳粛な雰囲気の中で読まれます。ユーモアを交えて生徒達の思い出作りに一役買います。しかし、「かしこみ、かしこみ申す・・・」のような言葉は現代っ子の生徒にも、我々教師にも意味不明の言葉が多く、もう一つ解りにくい文章でした。それをネモトマンが史上初めて現代風にアレンジしました。時の話題を盛り込み、ユーモアを交え、それでいてジンとくる文章を目指しました。

誰だ、わしが気持ち良く二千年の眠りについているときに、騒いで起こした奴らは。わしは、榛名富士に住む火の神である。さっき余りのうるささに目を覚まし、榛名湖の水の神に聞いたところ、ここ榛名高原学校にS中学校二学年百九十余名の生徒が入校し、厳しい修行をするために集まったと聞く。

しかし、相馬、氷室の山の神、天目の風の神の話ではお前達の学校生活は乱れに乱れている様子。例えば授業中は、まぶたが垂れ下がり、こっくりこっくりとカッターをこぎ、いや舟をこぎ、机一杯によだれを垂らし、寝てるんじゃねーと注意すれば、寝てませんと言い張る図々しさ。夏休みの宿題は出してもいないのに出しましたと嘘をつき、三学期になっても夏休みの宿題をやっている者もいたそうな。ところが部活動の試合になると井の中の蛙、声は小さく、元気もなく、相手の気迫に押され、その暗さときたら驚き、桃の木、二十一世紀である。

また、家に帰るや宿題はそっちのけ、テレビゲームやマンガ本に熱中し、下品な笑いを浮かべるしまつ。茶髪にピアス、腕輪に鼻輪のアイドルに夢中の女子生徒よ。はたまた、宇多田ヒカルとかいう小娘の唄にうつつをぬかす男子生徒よ、イッツオートマチック、なんだそりゃ。お前達は藤圭子の「夢は夜開く」を知っているのか・・・知らねえだろうな〜。

好きな人のことで頭の中が一杯で他に何も考えられない生徒よ。手軽な事ばかりに夢中になり、外見ばかりを気にし、肝心の中身を磨こうとしない愚か者め。たった一人しかいない自分、一度きりの人生、そんな生き方では人間に生まれてきた甲斐がないじゃないか。

この榛名高原学校に入校したからにはその軟弱な根性をたたき直してやるから覚悟をしておけ。しかし、お前達にも見どころがあることを湖畔の宿の女将、高峰咲子から聞いている。例えば、カッターに乗れて、よカッターとつまらぬだじゃれを連発して、みんなを笑わせようとする男子に気を使って、わざと笑ってやる思いやり。クラスで寂しそうにしている友達にさりげなく声をかけてやる優しさ。お前達も捨てたもんではないと実感したぞ。

そんなお前たちにこれからの人生に必ず役に立つ心の火を与えよう。この火はやがて大きな炎となり一生涯お前たちを照らし続けてくれるだろう。では、S中二年生の前途に幸あれ。

平成十一年九月吉日  榛名高原学校火の神より