驚くべきミツバチの「言葉」


 ハチは自分達の生きるための食糧を花にたくし、そして花にとって大事な花粉の仲立ち役を担ってそれを確実に実行している。特にミツバチは我々人間でさえも、まかり間違えば迷い子となってしまいそうな遠く離れたところまで蜜を求めて旅立ち、目指す花のありかを確実に探し当てる。
 
 いったいどのようにして、花のありかを知ることができるのだろうか。しかも、間違いなく自分の巣まで無事に蜜を持ち帰ることができるのだろうか。この不思議な能力をどのようにして身につけたのだろうか。
 ミツバチのこうした行動については、オランダのフリッシュという研究者が自分の一生のほとんどを費やして、いろいろと観察し究明した業績がある。

 それによると、蜜などを持ち帰ったミツバチは蜜を持っている花のありかを仲間達に知らせるという。そのために、羽と尻を振り動かしながら8の字にぐるぐる歩き回るミツバチ独特の踊り、いわゆる“尻振りダンス”を行うことがわかった。この踊りによってミツバチは蜜を持っている花の位置を距離と方角で知らせている。
 
 まず、自分の住み家である巣からどれくらいの距離にあるのかを知らせるとき、花までの距離が遠くなればなるほど、その踊りのテンポをゆっくりと行い、8の字に回る回数を少なくするが、反対に距離が近くなるほどその回転のテンポを早くし、その回数を多くすることで仲間達に伝え合うという。

 また、ミツバチが“尻振りダンス”を行うときの8の字の中央位置の軸は太陽の位置をもとにして決められ、その軸の方向が蜜を持つ花のある方向を指し示すという。我々人間にとって、また多くの花にとって、掛け替えのない大切なミツバチ達が、生きるがためのこうした優れた生活の知恵を持っていることは実に驚くべきことである。