アメンボ

水面波立たせ求婚・甘い香りを発し棒状

 春の雨は、一雨ごとに暖かさを運んできます。そして、陽気に誘(さそ)われるかのように、ひょっこりと水たまリに姿を現すのがアメンボです。水面をスイスイと軽やかに泳ぐ姿を見て、そのしくみに疑問をいだく方も多いでしょう。その答えは、水の持つ「表面張力(ひょうめんちょうりょく)」を巧みに利用した体の構造にあります。というのも、アメンボの体重はとても軽い(約0・03g)うえに、水と接するあしの部分には細かい毛が密生(みっせい)しておリ、水をはじく構造になっているからです。

 アメンボは、水面という空間でどんなくらしをしているのでしょう。アメンボの食べ物は、水に落ちた様々な昆虫です。飛んでいた昆虫が水に落ちると、もがいてはねをバタつかせます。この時水面には、小さな波が発生します。アメンボはその波をたよりに獲物を探し、針のような口で獲物の体液を吸い取リます。
また、オスのアメンボは、縄張リを主張(しゅちょう)したり、メスにプロポーズするときに、みずから水面を波立たせて信号を送リます。水面という空聞ならではの、「波」がアメンボのくらしの、大きな情報となっているのです。
 
 アメンボは、水面のみならず、飛ぶことも得意です。
よく、雨上がりの水たまリにどこからともなく現れることがありますが、これは、飛んでやってきたものです。空中を飛びながら、水面の反射をたよりに水辺を探し、着水します。さて、アメンボの名前の由来をご存じでしょうか。

 漢字で「飴ん棒」と書きますが、なめても甘くはあリません、、アメンボは、カメムシに近いなかまで、カメムシは刺激すると臭(くさ)いにおいを放ちますが、アメンボは、飴のような甘い香リを発し、体つきが細長い棒状であることに由来します。アメンボを捕まえて、ぜひにおいをかいでみて下さい。砂糖が焦(こ)げたような「べっこう飴」そっくリのにおいです。

(県教委昆虫の森建設室主任・筒井学)